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2007年04月11日
【
レンゲとスミレと言えば、中村君の思い出 】
「マスター、スミレがありませんっ!!」っと、そのとき中村君(仮名)は大きな声でカウンターの向こうで鍋を振っているマスターに言った。
店はたてこんでいて、もう何がなんだかわからないぐらいに忙しかった。時間は間もなくJRの東海道線の終電が走ろうかと言う頃。時はバブル前期。地方の飲み屋街とは言え、不気味なほどに景気が良く、夜はまだまだこれからと言う感じだった。
みな一軒目で軽く飲んで、その後で中華屋で腹ごなしをして、続いて二軒目へ向かうというのパターンの客層が多かった。出前はやってなかったけど、近所のスナックやクラブからは「器を持って取りにいくから!」と言うような注文も多かった。そんなバタバタした中華屋でバイトをしてたのは以前も書いたけど、その時の思い出で忘れられないのが、中村君のクチからでた件の「スミレがありません!!」と言う台詞だ。
中村君が大きな声でこの台詞を言った瞬間、店の中が凍りついた。
テーブル席もカウンター席もほぼ満員で、酔った客達はガヤガヤと大きな声で話をしていたので騒がしかったのだが、それが一転して静まり返った。そして、みんな一様に「スミレ…、ってナニ?」と言うようなカオをしている。私も「なんじゃ? スミレって?」っと、思わずレジを打っていた手を止めてしまった。
そんな中、カウンターの向こうの厨房で汗をかきながら鍋を振っていたマスターだけが、平然と手もとめずに「なんやっ? スミレってなんや?!」と大きな声で中村君に聞き返した(中華屋の厨房は換気扇の音がデカいので、おのずと大声になる)。
「マスター、これですよ。ラーメンのスプーンのス・ミ・レ。」っと中村君。気がつけば忙しくって洗物はシンクに山積み。どんな料理にでもたいてい付いて出て行くレンゲが全くなくなっていたのだ。私も中村君もフロアで忙しくって、小一時間以上、洗物どころではなかった。
「ボケェ! それは
レ・ン・ゲじゃっ!! 大学生やってて、そんなもんなんで間違えるんやっ!」っとマスター。
次の瞬間、店内は笑いの渦に巻き込まれた。「おぉ?」と言う感じで全然気にしていない中村君もなかなかのもんだ。その後、しばらくの間その店の中と言うか、近所のスナックとかもも含めてレンゲのことをスミレというのが符丁のように流行ったりもした。私なんか、そのうちどっちが符丁でどっちが正しいのか判らなくなりかけて、おもわず心のなかで、『えっと、レンゲ、だよな…』とか思ったりもした。
今になって考えてみれば、中村君がレンゲとスミレを間違えたのは、きっと彼が春の野に咲く「花」の姿を連想してたからなのだろうなと思う。そして、そんな連想ができた彼は、きっと自然に恵まれた良い環境で育ってきたのだろうなぁとも思う。色こそ違えど紫系だし、春の野に咲く小さな花だし。
そんなワケで、この時期、私はレンゲを見てもスミレを見ても中村君のことをいつも思い出してしまうのである。

|by Nagarazoku : 00:17|コメント (0)|トラックバック (0)|
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