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2006年08月24日

【 マンザナの風か… 】

久しぶりに充実した感覚を味わいつつ、読み終えた「太平洋を渡った日本建築」を閉じた。柳田由紀子氏の新刊である。建築に関して別段興味も持たない私の手元になんでこんな本がやって来たのかは定かではないのだが、おそらく何処かの書評で見て注文したか、Amazonのお奨めに釣られてポチリとやったかだと思う。初版を見ると2006年8月28日とあるので、Amazonで「釣られポチ」の可能性が高い。

まぁ、そんな「コトの始まり」のはどうでもいい。
読み終えた時に「読んでよかったな」という感覚を得られるかどうかだ。何を基準するかは人それぞれだろうが、要は満足感。良い本との出会いと言うのは多々あるものだが、満足感を得られるかどうかと言うと、それは中々難しいのではないだろうか。

兎に角、この本は私に満足感を与えてくれた。

それは単に自分が興味を持っていたことで、半ば放置気味だったことに対して、新しい取っ掛かりを与えてくれたからかも知れないのだが…。

この本の切り口は「日本建築」となっているし、当然にそう言う視点からでも充分に楽しめる内容だが、著者のバックグラウンドを考えれば、こめられているメッセージがそれだけだとは到底思えない。快活な口調の行間の端々から、アメリカと言う国と日本人移民の関係、そしてその真ん中に大河のごとく横たわる第二次世界大戦という史実が生々しく伝わってくる。いや、快活な口調だからこそ、余計にそう感じさせられるのかも知れない。もちろん筆者がどのように思いながら書いたかは知る由もないが私という一読者がそういう風に咀嚼して消化したのは事実だ。

3年程前になるだろうか、Julie Otsuka氏のWhen the Emperor Was Divineを読んだ。当時の自分の行動範囲を考えれば、たぶんALC出版か何かの関係で手にした本だと思う。著者は日系三世のアメリカ人。第二次世界大戦中に日本人収容所へ移り住むことを強制された家族の話が綴られた小説だ。

日本人収容所、特にカリフォルニアのそれについてはずいぶんと以前から気にはなっていた事柄で、だからと言ってこれと言って調べものに手をつけるわけでもなく、放置状態が続いていた。そして30代の終わりになってこの小説を読んだ後も、史実を追いかけることは無かった。ただこの小説を読んで「何かをきっかけに動いてみてもいいかな」的な取っ掛かりになったのは事実だと思う。

そして今回この「太平洋を渡った日本建築」を読んだことで、「もう一歩駒を進めてみるかな…」と言う気にもなった。まぁ、個人的に得た満足感と言うのは、こんな風に書いてしまえば、これだけのコトかも知れないのだが。

ただ、衣食住という人間の社会生活における基盤の一つ「住」を媒体にして、異文化の中で暮らし根を生やしていく移民の史実を綴った本だととらえれば、なまじっか装丁や体裁などに拘っている巷の平積本と比べたらかなりの良著だと思う。ここまでで書いた内容が琴線に触れたのであれば、1,600円と言う値段は案外安いものだと思う。

ところで、この本の第十一章に「強制収容所に咲いた花園」と言う話が書かれている。サブタイトルは --マンザナ戦時下日本人強制収容所跡-- だ。この章のサブタイトルを読んだ時、私の記憶は一気にWhen the Emperor Was Divineを読んでいた時にまで遡っていた。妙な縁と言えば、まぁ妙な縁だ。どちらの本も取り立てて意識をしたり、何かを期待して買ったものではない。だのにこの偶然だ。

絶妙な距離を保ちつつ、何かの歯車が動いているような、そんな感覚さえ覚える。

ちょっと気になってManzanar War Relocation Center in Californiaのことを調べてみようと思ったら、Ansel Adamsと言う名前がヒットした。そう、写真家Ansel Adamsだ。見てみればLC(Library of Congress:米国議会図書館)のサイトで、Ansel Adams's Photographs of Japanese-American Internment at Manzanarと言うものだった。読んでみるとAnsel AdamsはBorn Free and Equalと言うPhoto-documentaryを1994年に出していている。さすがにオリジナル版を手にすることは出来ないが、LCはデジタル化したものを同サイトで公開してくれている[ 参照:Born Free and Equal@loc.gov ]。

そういえば、件の第十一章の冒頭にも、Toyo Miyatakeの見事な写真が掲載されていた。雲の彼方、遥かにシェラネバダを望む荒涼としたマンザナの収容所の写真だった。

これも妙なところで写真つながり。実を言えば、来年あたりサンフランシスコへ撮影をかねて旅行に出かけようと思っていたのだが(もちろん仕事が順調で、スケジュールと財布の中身に余裕があればの話だが)、ちょっと進路を南に取ってLAX経由でマンザナへ行こうかと、そんな風に思った。興味の出たところから切り崩していくのは私の得意技だし、丁度良い機会かも知れない。

マンザナの名物は風だと言う。
しかも生半可ではない烈風だそうだ。

ヤスクニだとか、アジアだとか、愛国心だとか、国防だとか自衛だとか、右だとか左だとか上っ面の文字ばかりが、あたりさわりのない空調の効いた風に乗って躍るこの東洋の島国。そんな中にいてるよりは、ちょっとだけの間でも荒涼とした大地に立って強烈な風に吹かれてみるのもいいかも知れないと、正直そう思った。

≫ Manzanar National Historic Siteのホームページ
≫ LCのサイト:Ansel Adams's Photographs of Japanese-American Internment at Manzanar

|by Nagarazoku : 00:01コメント (0)トラックバック (0)

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