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2006年06月24日

【 矛先はそこ? 舳先はどこへ? 】

今思ってみれば、実質上失われてしまっていた米国の「自由」に対する尊厳が、この15年の間かろうじてまだ残されていると感じることができたのは、インターネットがあったからではないか。少なくとも米国は、国を挙げてインターネットの世界における中立性と自由を守ろうとしてきた。もちろんそれは、過去四半世紀にわたる経験値から情報と言うも手に取ることのできない物の価値を知つくしており、それらが開放されることによって起きるsynergyが自国の経済を更に潤し、国際社会における優位性を確立できると確信していたからなのだろう。

ネット・バブルと言う思わぬ落とし穴もあったが、そのような事態も、乱立する新興企業の中で劣性遺伝子を抱えていたものや、見通しの甘いベンチャー・キャピタリストを自然淘汰的に一掃するこができたと言う意味では効率の良い自浄作用をもたらした。しかるに、当初の思惑は概ね予想通りの効果を達成したと言える。

しかし今、インターネットの「自由」を守ることに努めてきた米国に異変が起こりつつある。確かに今までもその兆候はあった。兆候はあったが、それはあくまで反応拡散してゆくネットの世界に最低限の秩序を与えるための抑制措置と受け取ることもできた。「異変が起こりつつある」と書いた今でも、単に勘違いだと思う方が素直かも知れないと、気休め程度に思ってもいる。だが本当のところは、そんなに簡単な問題でもない。

渦中にあるインターネットの中立性に関する問題を言っているのではない。そんなものは古い体質の業界と、その上で本格的に活動を始めた企業との間の問題だと認識している。誰が基盤を整備し、誰がその上でサービスを提供するのか、誰が基盤を維持するための費用を捻出しているのか。その中で、イニシアチブを持つ者があって良いのか、それともそのイニシアチブは当然の権利なのか。要はそういう問題だ。内輪もめとは言わないが、純粋に米経済界の問題で、ビジネスモデルが変わっていくその過渡期における業界間の軋轢だと思っていい。

だが今度の話は少し事情が違ってくる。

米国時間6月22日、中国など「インターネット規制を実施している国々」で事業展開する米国のハイテク企業に対し新たに厳格な義務を課す議会法案が、法制化に向けての最初の難関を突破した。
[ 出典:ネット検閲国家への協力に罰則を--米下院小委員会が規制法案を可決@japan.cnet.com ]
この場面で、なぜISPや機器ベンダーが槍玉に上がらねばならないのか。「ちょっと理解に苦しむ」と書き捨ててしまうことも出来るが、いやいやどうして、これは一種の、いわば輸出規制に近いものがあるのではないかと邪推することもできる。

企業側に圧力をかけているのは「インターネット規制を実施している国々」そのもの。

それらの国々の「無碍」な意向に対して、企業の方は頭を抱えながらもそれら要求に柔軟に対応できるよう歩み寄りの姿勢を見せている。これは企業努力と言っても過言ではない。そしてインターネットを広げてゆくためのエバンジェリストとして活動しているそのベクトル変わっていない。出来る範囲の中で最大限の努力を払い、エンドユーザにサービスや製品の提供を続けているはずだ。

なのにcensorshipを行っている国々に対しては物申さず、なぜアメリカは自国資本の企業に矛先を向けるのか。それが手っ取り早いからなのか。それとも「守りの姿勢」に入ったのか。「インターネット規制国家」と米国が判断するのであれば、それらの国々に対して直接に物申すべきではないのか。それとも米国はそれほどまでに腰抜けになってしまったのか。

別に戦争を起こせと言っているわけではない。無茶な経済制裁を行えというのでもない。

当然「インターネット規制を実施している国々」もそれぞれに思惑や事情もある。それらの政策を加味した上で、なぜ、もっと建設的に前へ物事を進めようとする姿勢を米国は見せてくれないのか。13台のルート・サーバを米国が持ち続ける以上、今回のような消極的で場当たり的な対策ではなく、いままでの秩序を維持するための「正しい主張」を行って欲しい。

あらぬ相手に向けられた矛先を見ると、インターネットの世界における「自由」を脅かすのは、案外その生みの親かも知れないと思う。混沌の中、宇宙船「インターネット号」の舳先は、今どこを向いているのだろうか。

|by Nagarazoku : 00:02コメント (0)トラックバック (0)

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