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2006年04月07日

【 "桜が創った「日本」"を読んで 】

桜が創った「日本」―ソメイヨシノ 起源への旅:佐藤 俊樹 (著) 理解すると言うコトは、誤解すると言うコト。別にアタシが言い出したコトでもないし、いろんなヒトが折に触れ語っているコトだし、それに同意するアタシは何度もエントリの中で書いてきた。

だから、この本を読んだアタシは著者の言いたかったコト、まとめたかったコトを誤解しているのかも知れない。いや、読むと言う行為は取り込んだ内容を咀嚼し、どのように消化吸収するのかを読者に委ねているものだと仮定すれば、誤解もあながち著者にとって想定外のことではないかも知れない。

桜が創った「日本」には、「--ソメイヨシノ 起源への旅--」と言うサブタイトルが付いている。これらを見ただけでは「ソメイヨシノのハナシかな?」と言う程度のことしか推測できない。いや、漢字に注意して少し深読みするヒトなら、タイトルからおおよその内容を推測できるかも知れない。

そう、本の中身は「桜」「創った」「日本」なのだ。
なんとも切り口が面白い。

ところで、この本にはサブタイトルが付いていると書いたが、岩波新書の全てにサブタイトルが付いているワケでもない。いや、サブタイトルを付けているものは少ない。たとえば、いま書架から適当に抜き出したものを見てみると、サブタイトルを下げているのは20冊中、川本茂雄著「ことばとイメージ --記号学への旅立ち--」、「言語学のs誕生 --比較言語学小史--」、「日本語の構造 --英語との対比--」の3冊である。なるほど、サブタイトルを持たないものと比較してみれば、やはりどれもタイトルだけでは足りない「意味」を伝えようとしている。単なる装飾的なコピーラインではなく、本のタイトルを補完するための重要な役割が割り当てられているのだ。

そこで今度はサブタイトルに注目しなければならない。「ソメイヨシノ」と「起源への旅」の2つのワードが、さりげなく「半角スペース」で結ばれている。この「半角スペース」が実に良い。この2つのワードを適当に結んで「ソメイヨシノの起源を求めて」とかやってしまっては、台無しになる。「ソメイヨシノ」と「起源への旅」をあえて分かち書きしたところに、著者の佐藤俊樹氏立ち位置や、編集を担当された方々のメッセージが込められているような気がしなくもない。

もちろん本の中身は、その生い立ちも含め、ソメイヨシノのコトを「軸」に書いてある。「軸」にはなっているが、この本の主人公はソメイヨシノではない。主人公は「日本」民族(と、アタシは消化吸収してしまった)。

桜のコトを思ってこの本を読むと、確かに一部で言われているように少々物足りないかもしれない。しかし「日本」民族のコトを思って読むと、なかなかありそうでなかった切り口の、とても面白い本だと言える。

最後の方でかなり駆け足的な流れになってしまっているのが残念な気もするが、それは本著を綴ってゆくと共に、桜を通した著者の視野が急速に広がろうとした、その結果なのではないかと、そんな風にも思えた。枚数の制限や、〆切りの手前、そして主題の手前、おそらくまだまだ書き足りない部分もあるのだろう。

あとがきに
もうおわかりであろうか、この本の主題はソメイヨシノや桜というより、ソメイヨシノを語る言葉、桜を語る言葉である。
と書かれている。言葉はニンゲンの持ち物。日本語である「サ クラ = 桜」は日本人の持ち物、そしてこの本の筋書きは日本人と言う民族と桜の関係なのだ。

先に「視野が急速に広がろうとした」と書いたが、それは「日本人」から日本が外れて「人」もしくは人が生み出すもの、すなわち「人工」へと、そして「桜」が「自然」へと、それぞれもっと大きなグループに置き換えられて語られている部分があったからだ。
ソメイヨシノは枯れやすく、種子もできにくい。にもかかわらず、日本の桜の八割を占めている。その意味で、ソメイヨシノの風景はきわめて人工的なものだ。だから不自然だ、と人間は思う。

だが、これはまったく逆の方向からも見ることができる。ソメイヨシノが日本の桜の八割を占めているという事実こそ、この桜が現状で十分成功している証拠ではなかろうか。ソメイヨシノはたしかに枯れやすく、種子もできにくいが、そもそもソメイヨシノには枯れにくかったり、種子をたくさんつくったりする必要があるのだろうか。

病気が蔓延すれば人間の方が「桜を救え!」と騒ぎたてて、いろいろ対策を講じる。種子ができなくても、人間の方が勝手にクローンをつくってあちこちに植える。何もしなくても人間がやってくれる。

もっと考えを進めれば、この「人間の方でやってくれる」ということ自体がソメイヨシノのなせる業ではないのか。

中略

ソメイヨシノの普及に人間が深く関わっているというより、本当はソメイヨシノが人間をうまく使って繁栄してきたのではないか。
と言う部分が最後の方にある。アタシはこの下りがとても気に入っている。警鐘を鳴らしたり、大上段に構えて口上ばかり騙っている昨今の風潮にくらべて、なんとおおらかで、そして説得力のある語り口調だろうか。結局は自分自身が生態系と言うシステムの一部分であると言うことを忘れてしまった人間の不完全な思考のなせる業、いや、その不完全さこそ、生態系が必要としている部分だと、やんわりと諭してくれている。植物の花の色や形状に意味があるように(詳細はこれまたお値打ち価格の、塚谷裕一氏の植物のこころを参照してください)ソメイヨシノを美しいと感じ、それに惹かれる人間がいれば、植物の方で固体維持のためにソレを利用してしごく当然である。

本当はもっともっと引用して書きたい部分もあるのだが、それではちょっと申し訳ないので、この部分だけにしておく。明治、大正、昭和を通し、日本人の気質にソメイヨシノがどのように働きかけ、繁栄してきたのかを読んでいくうちに、思考の境界線が消えてなくなってゆくのを体験したい方にはお薦めの1冊。これで740円は安すぎます。

|by Nagarazoku : 00:00コメント (2)トラックバック (0)

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こんばんは、パパゲーノと言います。
ソメイヨシノは弱い桜の木ではありません。
青森の弘前には120年の「ソメイヨシノ」があります。
東京で生まれたので東京の環境に合っているようです。
学校の校庭とか、お城の堀のまわり、川の土手が適しています。
風通しの良い、広い環境を必要とする桜の木なのです。
最近、そのような環境が少なくなりました。
ソメイヨシノの生育に適した環境のならば、
1000年以上の老木のソメイヨシノも可能だと思います。

最近、このような記事があります。

「ソメイヨシノ」の「両親」判明=
「オオシマザクラ」と「コマツオトメ」-遺伝子解析で
   時事通信2007/03/26-20:13

 桜の代表的な品種、「ソメイヨシノ」は、
伊豆地方に固有の野生種「オオシマザクラ」と
東京・上野公園などにある「コマツオトメ」の交配で
生み出された可能性が高いことが分かった。
千葉大や静岡大などの研究チームが遺伝子を解析した成果で、
30日から茨城大で開かれる日本育種学会で発表する。
 ソメイヨシノの起源をめぐっては、
(1)江戸時代に染井村(現在の東京・駒込付近)で育種された
(2)伊豆半島に自生していた
(3)韓国・済州島の王桜が先祖-
との3つの学説があった。
今回の遺伝子解析結果によると、染井村説が有力となる。
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_date2&k=2007032600439

投稿者 papageno : 2007年03月30日 00:19

> papageno様:
コメント、アリガトウゴザイマス。

なるほど、遺伝子解析でそこまで解明されましたか。
生き物は時代や場所の特性に順応して、もしくはそれらの環境に最も適したものが自己のチカラや外的なチカラを上手く利用して増殖していくものだと理解しています。おっしゃっているように、ソメイヨシノが当時の東京で生まれ、そうして広がっていったのももっともな話だと思います。

老木のソメイヨシノもよい物でしょう。

そうしてそのように老木として生きながらえていくのは、とりかこんでいる環境だけではなく、その固体の持つ特質も多少なりとも影響しているでしょうし、そういう側面を考えれば、その中から新たな環境にも対応しうる次世代のソメイヨシノが生まれてくるのかも知れませんね。

自然交配でも、人工的な交配やクローンや遺伝子操作でも、結局それは進むべくベクトルが決まっていて、その中の選択肢の一つを取ってモノゴトが進んでいるのではないかと常々思っています。そしてその構図を俯瞰してみれば、ニンゲンが恣意的に行っている遺伝子の組み換えや交配も、「実はのベクトルにおける1つの媒体でしかないのかな」とも思えてきます。人間の存在が偶然でないのであれば、その存在の必然の秘密はこのあたりに隠されているのではないかなとも思えてきます。

投稿者 Nagarazoku : 2007年04月01日 14:41




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